1 アメリカのホテル選び
みなさん、ホテルはご自分の予算や目的に応じて、三つ星、四つ星、五つ星など、色々な選択肢があります。ご自身の一番快適な、お金の価値に見合うホテルをどう選ぶかは、予算が最大の決定要素だとは思いますが、その予算もそのホテルがある地区の物価を考慮しないといけません。
例えば、ニューヨークの3万円とロサンゼルスの3万円は全然価値が違います。
その辺をフレキシブルに考えると、同等クラスのホテルでもその地区によって、これ以下にはしたくないなと言うときに、満足度の高い最適なホテルが選べます。臨機応変に予算の幅を動かさないといけないと言うことになりますね。別な考え方で言えば、サンフランシスコでは三つ星しか泊まれないけど、同じ予算でロサンゼルスなら四つ星に泊まれる、という予算の組み方もあります。
私の一番のお勧めは三つ星半、つまり四つ星に近い三つ星になります。このクラスが一番無難という考え方です。三つ星ホテルは数が多く、料金的にリーズナブルですが、サービスやファシリティ、アメニティ、部屋そのもの、色々な点で当たり外れが多い、というのが三つ星の特徴です。クラスが上に行けば行くほど、当たり外れが少ないと言うことになります。余裕があれば四つ星に泊まっていればほぼ満足レベルの滞在が保証されるでしょう。
五つ星は良くて当たり前だし高いし、肩が凝ると言う方もいます。提供される全てのサービスの付加価値が上がるので、朝食を取っても高いし、ランドリーに出しても高い、部屋に置いてあるボトルウォーターは目が飛び出るほど高いし、三つ星なら1-2ドルで済むチップが5ドルになったりと、いろいろな意味で余裕が必要です。そう言う余裕のないときに五つ星に泊まると、快適な滞在ができるとは言い難いと思います。またホテルスタッフによっては、お客様である我々が見下されているような態度を感じたり、ということで私なんかは却ってストレスが溜まってしまいます(笑)。
その点でもマリオット、ヒルトンなどに代表される四つ星ではそこまで堅苦しくない、日本人にとって程よい距離感のサービスが受けられると思います。金額の違いがサービスの質にあまり影響しないと言うのも四つ星の特徴だと思います。
三つ星になると、ベルボーイを呼んでもちっとも来ない、エクストラベッドを頼んでも30分も1時間も待たされる、トイレやシャワーに不具合がある、などということも珍しくありません。日本の三つ星、いわゆるちょっと格の高いビジネスホテルのあたりと比べるとスタンダードの考え方がこれほどにも違うものかと驚くことになります。
そんなわけで、快適に過ごしたいけど過度のサービスは期待しない、と言うような場合は、三つ星半が無難かなと思うわけです。ただこの「三つ星半」の正解なホテルを見つけるのがなかなか難しいのです。ではいったいどのホテルがこれに該当するのか、と言う問題に目を向けてみましょう。
まず参考になるのはカスタマーレビューです。実際に泊まった方が体験に基づいて書いているので信頼性があります。ただこれも、たまたまそういった体験をしたと言う場合もありますから、年代的にもランダムに、そしてある程の数を読んでみないと偏った見かたになってしまいます。一度あるホテルでこんなカスタマーレビューがありました。「ロビーにあった時計が正しくなかったためフライトに乗り遅れた。」ということで最低のサービスだと評価してたのです。でもこれは三つ星ホテルで、ホテル側も夏時間になったのをうっかりしたためのミスだったようです。アメリカに長い私にとっては許される範囲ですが、この宿泊客にとっては許しがたいことだったのでしょう。
特に三つ星はサービスにばらつきがあるため、あなたが宿泊されるときは、ぜひ良いことと悪いことを客観的に書いてあげてください。後々利用する方達の参考になりますから。そのとき、できれば泊まった部屋の番号を書いておくとさらに良いでしょう。フロアや向きによっても景色や金額が変わります。インフォメーションが具体化されるとさらに参考になると思います。
あと、10年ほど前から三つ星、四つ星という星の数では表現しきれない新しいカテゴリーのホテルが増えて来ました。ブティックホテル、デザインホテルというのがこれに当てはまります。このカテゴリーは、数十室の小ぶりなホテルが多いようです。また料金に比べて1ランク高い内容のホテルが多いように感じます。特にハード面の内容が良い、付帯的なサービスは省かれている、スタッフの数も少ない、ハード重視の投資という特徴があります。この部分を理解しないとあれがない、これがない、ということになるので注意が必要です。ホテルの常識からは外れたような作りになっていたりすることもありますが、自分に合ったものを選ぶと意外な快適性が保証されます。
このカテゴリーのホテルは一般的に朝食に力を入れているところが多いのも特徴です。ものすごい美味しいクロワッサンが出る、コーヒーを一杯一杯作ってくれるなど、意外と宣伝しにくい隠れた部分に力を入れているホテルも多いようです。二つ星、三つ星クラスの朝食は一般的に冴えないことが多いですが、こう言うホテルに当たると朝から思わず微笑んでしまいます。
最後に、最近ではホテル滞在にインターネットは不可欠ですよね。デバイスも1人2-3台持っていることも少なくありません。インターネット接続が快適でないと仕事にも差し支えますし、Wi-Fiが無料で使えると言うこともポイントの一つですよね。ホテルによっては1台のデバイスしか接続できないとか、高速接続には追加料金がかかるとかということもありますから、この辺りが重要だと考える方は、事前に確かめておくことをお勧めします。逆に四つ星、五つ星は未だに有料のところも多いようです。また、部屋によって接続速度が一定しないこともあります。この辺りは泊まってみないと分からない、ということになりますから、この辺りを重要と考える方は早めにチェックインして、荷物を開ける前に不具合をチェックして、問題があればすぐに部屋を変えてもらう、など工夫するしかありません。
インターネットをはじめそこそこの設備が整っている、朝食が充実しているなども大切な要素だと思っています。昔は大型のホテルは当たり外れが少ないと言う認識が一般的でしたが、小型のホテルも生命をかけて頑張っているところも少なくありません。その辺りを発掘するのもホテル滞在の楽しみの一つです。
最近はホテル経営者の常識が変わって来たとも言えますが、今までの枠にハマらないホテルが多くなって来ているのも近年の特徴です。一昔前までは、良いホテルは大型のホテルという考えが一般的だったのですが、ホテルのサイズや歴史に関係なく、特徴のあるホテルが出現しているので、ホテル選びも面白くなって来ました。ある程度絞った上で、地元の人(ロサンゼルスであればエレファントツアー)に意見を聞いてから最終決定をするのも手だと思います。
2 ホテルに対するクレーム
ここではアメリカのホテルにおけるクレームの話をしたいと思います。チェックインの段階からホテルの様々なトラブルを経験された方も多いのではないかと思います。
一番ひどいのは、やっとの思いでホテルについて、チェックインカウンターに向かうも、「ノーリザベーション」と言われることですね。つまり、あなたの予約は入っていませんよ、と。またはオーバーブッキングで部屋が用意できないので他のホテルに行ってください、と言われたときですよね。本人にとってはとてもショッキングなことだと思います。こういうときはどう言う対応をしたら良いのか、という話をしたいと思います。
一番してはいけない対応は、大声で怒鳴ってしまうというような、いきなり怒りをぶちまけろと言う行為です。これは、サービス業界において最も損なやり方です。
トラブルがあったときは、まず冷静に落ち着くことです。どうすれば最良の解決方法なのかと言うことを思いめぐらせなければいけない訳です。ひたすら自己主張をし続けると言うのは、あまり賢いやり方ではありません。私もオーバーブックに遭ったことがありますが、オーバーブックというのは、ホテルが限定された部屋を販売している限りなくならない事象です。
絶対にオーバーブックに遭いたくないと言う方は、100%これがないことを保証してくれるホテルに泊まるしかありません。そしてそう言うホテルは世の中に存在します。いわゆる本当のVIP、セレブリティが泊まるような超高級ホテルと言うことになります。理由は、セキュリティ面などで、こういった人たちを他のホテルに泊まらせるわけに行かないからです。
オーバーブックということそのものについて話を掘り下げて行きましょう。自分が到着したときに、もう一部屋もない、と言う状態にあるのかないのかがポイントです。すなわち、到着したときに、他のお客様が全員チェックインしていて、自分にアサインされる部屋が一部屋もないと言う状態のとき、このときはもうどうしようもありません。ホテル側からより良い条件を出してもらって(最初の一泊を)他のホテルに移ると言うことを覚悟して、その交渉に入る必要があります。つまり、200ドルの部屋の予約だったら、300ドル以上の料金のホテルに移るなら条件を飲むとかと言うことになります。またそのホテルまでのタクシー代も負担してくれるように交渉するなど、相手の顔色を見ながら冷静に交渉することがたいせつです。
ただ、時間帯によって、例えば午後3時とか4時とか、まだ夕方と言えないような時間にチェックインしたときに、「オーバーブックです」と言われたとしましょう。でもこんな時間なら、まだ到着していない宿泊客がたくさんいるはずなんです。にもかかわらず、オーバーブックのためのリロケーションする対象として選ばれてしまったわけですよね。こういうときは、冷静に担当者と交渉します。ホテル側は、誰かを出さなければならない。それであなたが選ばれてしまった。という訳ですから、私を選んでもらっては困る、という事情を冷静に話すことです。
それとホテルのフロントのスタッフ、その人そのものがあなたを対象に選んだわけではありません。それなりの責任者が、誰をどのホテルに移すのかを決めている訳ですから、そう意味で、担当スタッフに怒りをぶつけるというのが賢明なやり方ではないことが理解できると思います。その人そのものが権限があるなら怒っても意味があるかもしれませんが、権限がない人に喧嘩腰で主張しても、その人は決められたことを黙々と処理するしかない、ということを理解することです。では、どうすれば良いか。
大切なことは、「どうやったら好感を持たれるゲストになるか」と言うことです。綺麗とは言えない格好をしている、振る舞いが粗野である。そう言うような人は、ホテル側が好感を持たないですから、交渉にも応じない、ただ機械的に処理するだけ、もっとはっきり言うともう利用してくれなくて結構、というようなことまで発展してしまう訳です。
ところが、もしあなたがそれなりにきちんとされていて、対応が穏やかで、相手が「申し訳ないな」と言う気持ちになってくれればしめたものです。反対の立場ならこの辺りもその通りだと思いませんか。この人とあまり関わりたくない、と思わせては機械的に処理されてしまうだけなんです。なんとか相手に「もう一度選び直そうか」という気になってもらうことが大切です。いきなりカッとなり言葉や態度に出てしまうのは、オーバーブック回避の交渉を不利にしてしまいます。
実際、私は何度もオーバーブックをかいくぐっています。実際には、本当に全部の部屋がもうチェックインされているのかどうかと言うのはゲスト側には調べようもないのですが、常識的に考えて、深夜12時にそう言われたのと夕方4時にそう言われたのでは、感覚的に大きなずれがあると思います。
日本の人は、よく高飛車に「責任者を呼べ」とか、「GMから謝罪状を取り付けろ」とか言う場合がありますが、これも相手を不快にさせるだけです。あなたなんか関係ない、あなたなんか権限がないんだから、といきなり言われる訳なので。「あなたにお願いしたい」というフレンドリーで敬意を持った言い方が、動いてくれる気になってくれることにつながると思います。
その他、不快なサービスを受けた、修理して欲しいのに全然対応してくれない、ということがあります。こう言うときは、それなりのホテル(三つ星以上)ではない場合、イライラして待つより、諦めた方が良いかもしれません。ファシリティそのもの、サービスそのもののレベルが低い訳ですから、そういうところで不運にもトラブルが起きてしまったら、気長に待ち、対応してくれた際にはお礼をきちんと伝える、というように気持ちを切り替えたほうが早いかもしれません。
四つ星、五つ星クラスになると、こういったトラブルに即座に対応してほしい、という気持ちが強いと思いますが、対応可のものと対応不可のものがあります。一番困るのはトイレ問題ですよね。トイレが使えないと言うことは部屋が使えないと言うことに匹敵します。流れない、流れっぱなしになる、なんてなると、自分では修理しにくいし、ヘタをするとさらにひどい状態になりかねません。不運にも真夜中に起きてしまったら保守担当者不在ということで、即座な対応ができない場合もあり得ます。こういった場合にはその夜だけでも部屋を替えてもらった方がいいかもしれません。
こういった時間外のトラブルの場合、翌日の担当者に申し送りができているか、と言うのもポイントの一つだと思います。ナイトマネージャーがいるなら、起きている問題をその人に伝えておくのも大切です。またその人がきちんとメモを取るのを確かめた方が良いです。一方で、こちらも、何時に、誰に伝えたかをメモしておくと翌日連絡が行っていなかった場合にきちんと伝えることができます。
ホテルと言うのは4シフトまたは5シフトで動いているので、伝言が命です。ひとこと言えば関連部署に確実に伝わる、というような日本の常識は通用しないことが多いので、上記のような自己防衛も、トラブルを最低限にするための対応手段の一つです。
3 謎のリゾートフィー
ハワイ発祥(たぶん)の「リゾートフィー」についてお話ししましょう。2020年に近くなるとやたらこの「リゾートフィー」やらが加算されるホテルが増えて来ました。厄介なのは宿泊代金に現れて来ない数字で現地で加算と言う方式を取っているホテルが多いと言うところです。使いもしない駐車場料金、フィットネスジム利用料金、ファクス使用料、市内電話料金など本来有料サービスをひっくるめて一括請求しようというもの。1泊数十ドル×泊数分の強制徴収で、しかも課税対象で、宿泊代金に加えて現地精算と言うはちゃめちゃぶりです。ロサンゼルスでもリゾートフィーをちゃっかり徴収するホテルも増えて来ました。もっともこのリゾートフィー、ニューヨークでは「ファシリティフィー」、ロサンゼルスは「ユーティリティチャージ」と名称は様々ですが、これまでホテルで提供していた有料サービスを一括チャージすることで、より快適な滞在を楽しんでもらうことを目的に設定された料金という意味なのだそうです。日本人にとっては迷惑で分かりにくいものですが、そう言っていても拉致が開かないので、予約前に再確認することをお勧めします。
4 クラス別のホテルリスト
現在、各ホテルのリンク先は製作中です(2022年8月1日現在)